ヒーリング・クライシス

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ヒーリング・クライシスとは

【ヒーリング・クライシス】という言葉を知っているでしょうか?

ヒーリング・クライシスとは、トラウマを手放す過程で起こることがある、症状や状態のことです。人によりますが、一時的に今までより症状が悪化したようになる場合があります。

知識としてだけではなく、ボク自身がこのプロセスを経験したことは、セラピストとしてとても重要でした。そのつらさを知ったこと、それ以上にこれを乗り越えることで実現する“トラウマから解放”されていく心境とはどういったものか、それを伝えることができ、そのままセラピーに生きるからです。

はじめて読まれる方はこのブログの概要でもある「はじめに」をご覧頂ければわかりやすいかと思います。

anohi.hatenablog.com

目次

 

フラッシュバック

未解決のまま放置されている、「無力だった子ども時代の不平等な関係性の中で起こった出来事やトラウマ(心の傷)」があると、その出来事やトラウマを与えた人と置き換わるような代用者を引き寄せ、同じような関係性やそれに伴う苦しみを再現します。 中でも気づかないところで頻繁に起こっているのが、「フラッシュバック」です。

トラウマを抱えている人が、過去(主に幼少期)のつらかった出来事や体験と同じような状況に置かれたり、過去の関係の中でネガティブな感情を心の奥に抑え込んでしまっていたような、人からコントロールされてしまうパターンに出会うと、当時抑圧された感情や身体感覚が(湧き出します)蘇ってきます

その時と同じ緊張感・恐怖感・無力感などの感情・感覚や窒息感・動悸などの症状で呼び起されたり、あるいは頭痛などの身体の痛みや身体の凝りなどの症状となって表れたりします。

 

幼く無力だったあの頃の自分には何の責任もない

インナーチャイルド(内なる子ども=傷ついたまま取り残されている子ども時代の無力な自分)は、再現されている事象を通して、その時の悔しかった思いに気づかせ、子ども時代に負わされた不平等な関係性の中で起こった出来事やトラウマの責任は、自分にはまったく無かったという事実について深く認識させようとし、洞察に至るまで、また他の代用者を引き寄せて再現は繰り返されるのです

それは、まるで心の奥底に潜んでいる怒りや恐れ・悲しみ・憎しみ・嫉妬・劣等感・罪悪感・自責感などのネガティブな感情や、放置されたままの心の傷が、子どもの頃の悔しかった出来事や心の傷を与えた人と置き換わるような代用者を引き寄せているようなものです。

そのため、過去のつらかった体験を、もう一度体験するように感じ直し、子どもの頃に返って、「怖い! 悲しい! 寂しい! ひどい!ずるい! 悔しい!」という、言葉にできなかった気持ちを言葉にし、泣いて、怒って、「私(僕)のせいじゃなかった! 悪くなかった!」という気持ちに確信が持てるようになる、という過程を踏まえることが必要なのです。

そして「今も浮遊し続ける過去のネガティブな出来事や体験」と「ネガティブな影響が与えられてきた関係性や過去の関係で身についたネガティブな習慣」を振り返り、「きちんと過去のものにする」、「自分らしく生きられるものにする」ことを行っていきます。

これが「トラウマ・セラピー」です。 

つまり、過去のトラウマティックな出来事と、過去の関係性や生活習慣の中で抑圧してきた感情や本当の欲求を感じ、その時の感情や本当の欲求を解放することで『本来の自分らしさ』を取り戻し、自分らしく生きていけるようにするものです。

 

安心・安全な環境と関係性

しかし、トラウマを抱えた人は、人と接する時に、またコントロールされるのではないか傷つくのではいないかと警戒し、過敏になっていていつも不安と恐れを感じています。

そのためトラウマを抱えた人を巡る環境や関係性が、その人にとっての安心・安全なものにならない限り、過去のトラウマや過去の関係性の再現、わかりやすいところで言えば、過去と同じような状況に置かれた時、つらかったイメージや感情のフラッシュバックが繰り返されるのです。

 

「トラウマ・セラピー」では、まず、セラピスト(カウンセラー)との信頼関係を深めていくことで、安心・安全な関係を構築していくことが大前提となります。

今までのような、感情を抑圧せざるを得ない上下のある支配的な環境や関係性から離れ、安心して自分の感情を感じ、自由に表現できるような安心・安全な環境や関係性に身を置いた時、脳(心)は回復の動きを始めるのです。

この、いじめや虐待、支配やコントロールのない安心・安全な環境に身を置くということがとても大切なのです。

そして脳(心)が安全を感知すると、感情への否認が解け、今まで閉じ込めてきたネガティブな感情を解放し始めます

それは、今まで見ないように感じないように心の奥に押し込んできた本来の自分の感情が蘇ってきたことを意味するとても重要な過程なのですが、もともと生き抜くために自己防衛として見ないように感じないよう閉じ込めてきたネガティブな感情に直面することになるわけですから、とてもつらく、一時的に症状が悪化したように感じてしまうことがあるのです。

このような現象を「ヒーリング・クライシス」と呼びます。

 

ヒーリング・クライシスの症状

「ヒーリング・クライシス」としての症状は、以下のようなものです。

身体的症状…既存する症状の頻発or持続or増強(頭痛・肩凝り・倦怠感・生理痛など)、嘔吐、咳、くしゃみ、鼻水、喉に何かが詰まる感じ、消化不良、下痢、めまい感・動悸・窒息感・発汗・震えなどを伴ったパニック発作、かゆみ など

 

精神的症状…不安感、恐怖感、悲壮感、じっとしておれない感じ、音や変化・空間・人に対する過敏性、イライラしてしまう、暴れたくなる、物や人に当たってしまう、つらかった過去を想起する(フラッシュバック)、死ぬのではないか・気が狂うのではないかという強い不安や恐怖を伴ったパニック発作、自分が壊れそうになる、気持ちが沈む、死にたくなる など

 

その他…過敏反応として不眠、恐ろしい夢・苦しい夢・うまくいかない夢を見てうなされる、回復反応として眠気 など

 

「ヒーリング・クライシス」の状態では、その感情のもととなった過去につながりやすく、子どもの頃の自分(インナーチャイルド)の感情が呼び起されやすくなります。

 

「トラウマ・セラピー」

「トラウマ・セラピー」では、「インナーチャイルド・ワーク」といって、過去(主に幼少期)のネガティブな出来事や体験があった年齢までさかのぼって、見ないように感じないように閉じ込めてきた感情の存在に気づき、その感情を感じ直すことから始めます。

その時の感情を感じたら、ありのまま表現し、過去の感情を解放します。

怒ったり泣いたりするなどして感情の処理ができ、言いたかったことを伝えるなど、その時にできなかったことを行っていきます。

トラウマの後遺症としての症状や依存症・嗜癖などの問題(詳しくは『PTSD

~虐待による後遺症~ をご参照下さい)は、

saitomental.ti-da.net

子どもの頃の、親や身内との関係の中で「身についたネガティブな習慣」と「心の奥に押し込んだ怒り・悲しみ・恐怖などのネガティブな感情」がもととなって起こっているものですので、感情への否認が解けて、今まで閉じ込めてきたネガティブな感情を感じ、それを表現し解放していくことで、トラウマの後遺症の症状や依存症・嗜癖などの問題の改善を見ることができるのです。

ですから、この「ヒーリング・クライシス」をどう乗り越えていくかが、大きな分岐点でもあるのです。

 

インナーチャイルドが息を吹き返す時

「ヒーリング・クライシス」は、見方を換えれば、親や社会の刷り込み(洗脳)による「こうあるべき」という理想思考(思考優位である理想自己)に乗っ取られていたものが、力を失いかけていたインナーチャイルド(感情そのものである本来の自己)が息を吹き返すこと、『本来の自分らしさ』を取り戻す中で起こる現象とも言えます。

「ヒーリング・クライシス」の症状は、インナーチャイルドが理想自己に乗っ取られていた状態からの回復過程で起こる症状でありますが、この状態にある間は、理想自己(偽りの自己)とインナーチャイルド(本来の自己)のせめぎ合いが激しく、ある時は理想自己が抵抗して理想自己優位になると、落ち込み・絶望的な気分や自己処罰傾向になったり、ある時はインナーチャイルド優位となって過去の抑圧した怒りや恐怖などの様々な感情が一気に引き出されると、攻撃的になったり、パニック状態になったりすることもあるのです。

 

しかし「ヒーリング・クライシス」の過程で通る、「フラッシュバック」や「苦しい夢」による再現も、過去の出来事がちゃんと過去のものとなって、忘れていくことができるようになるための過程として与えられたものと考えることができ、その時のネガティブな感情の存在に気づき、そして感じ、それを表現し解放していくことが大切なのです。

 

 次回から数回は、ボクの身に実際に起こったヒーリング・クライシスと、トラウマの解放についてを綴ります。