第三章では
学校のことで悩(なや)みがある子どもさんと、そのお父さん・お母さんへ
ということで、「不登校」や「子どもさんの言葉(ことば)にならない心の声(こえ)」について向(む)き合っています。
今日(きょう)は少(すこ)し、お父さん・お母さんむけの内容(ないよう)になっていますが、悩みを抱(かか)えた子どもさんが読(よ)まれることで、楽(らく)になれるところもあると思います。
はじめてお読み下(くだ)さる方(かた)は、第三章(だいさんしょう)の最初(さいしょ)の記事(きじ)も合わせてご覧(らん)いただけたら幸(さいわ)いです。
悩みの深刻(しんこく)さ、心の傷(きず)、将来(しょうらい)への影響(えいきょう)のレベルは人によって違(ちが)う
ボクは、心の専門家(せんもんか)になって、家庭(かてい)や学校(がっこう)がその人にとってどれほどつらい場所(ばしょ)だったかなど、今までおもてに出すことができなかったところを聴(き)いてきました。
そしてそれがどんなふうにその人に影響(えいきょう)しつづけてきたか。
その心の傷(きず)から回復(かいふく)するのがどんなに大変(たいへん)か。
ということも感(かん)じてきました。
ですからひとりでも多(おお)くそのつらさや影響から守(まも)られるように、
『悩みの深刻(しんこく:じゅうだい)さのレベルは人それぞれで、うける心の傷(きず)や、将来(しょうらい)への影響(えいきょう)も人によって違(ちが)う』
ということ、
『深刻(しんこく)な影響(えいきょう)をうけて、なかなか立(た)ち直(なお)れなくなる気質(きしつ:にんげんがそれぞれにもつ、心やからだのせいしつ)の人もいる』
ということを、悩みを抱(かか)えている人だけでなく、ご家族(かぞく)の方(かた)にも知(し)っていてもらいたいと願(ねが)っています。
家庭(かてい)に求(もと)められること
学校という場所(ばしょ)がその子にとって、深刻な心の傷や将来への影響をうける場所だとしても、学校を変(か)えることはできません。
ですからその子の悩みの深刻さによって、選択(せんたく)や対応(たいおう)が必要(ひつよう)なのです。
それ以上に大切なのが、心の安全基地(あんぜんきち)といわれる家庭です。
安全基地に、子どもは何を求めているでしょう
ボクは、まずはお父さん・お母さんが自分のつらさや気質(きしつ)をわかって、それを心からうけいれてくれることだと思うのですが、みなさんはどうですか?
カウンセリングの場では、
「お父さん・お母さんに言(い)えなかった」
「わかってもらえなかった」
という残念(ざんねん)な気持(きも)ちが心の中に閉(と)じ込(こ)められたままだったという大人の方々(かたがた)の声を聴(き)きます。
子ども時代はそれほどお父さん・お母さんにうけとめてもらうことが大事(だいじ)だし、そのことが将来にも影響を与(あた)えるというわけです。
けれど中々(なかなか)うけとめることができないというお父さん・お母さんの立場(たちば)や気持ち、その歴史(れきし)も知(し)っています。
中々うけとめられない理由(りゆう)についてはこれまでの記事ですでにお話しているので、ここでは
「うけとめられるようになるためのヒント」
になればと思うことについてお伝(つた)えします。
子どもの姿(すがた)に映(うつ)る、お父さん・お母さんの「子どもの頃(ころ)のじぶんの姿」
じつは、ボクの仕事からの経験(けいけん)では、
「子どもさんが不登校(ふとうこう)」
「幼稚園(ようちえん)や学校への登園(とうえん)・登校(とうこう)を嫌(いや)がる」
といった子どもさんのお父さんかお母さん、
もしくは両方(りょうほう)に、
「わたしも学校がつらかった」
「わたしも学校にどうしても行きたくないときがあった」
「わたしも不登校(ふとうこう)だった」
という心の傷(きず)や体験(たいけん)がある場合(ばあい)がひじょうに多(おお)く見られるのです。
だけど、わかってもらうことができず、何とかのりこえてきたというお父さん・お母さんは、同じように、がんばらせなきゃと思って、親子(おやこ)でつらい思いをしてきたというお話(はな)しをよく聴(き)きます。
「親(おや)は、子どもの姿(すがた)に、子どものころのじぶんの姿が重(かさ)なり、過去(かこ)のことと思っていた、イヤだった、つらかった体験(たいけん)を再体験(さいたいけん:ふたたびたいけん)する」
これは、子育(こそだ)て中のお父さん・お母さんに実際(じっさい)に起(お)こっていることなのです。
そこで、
「『イヤだった』『つらかった』体験(たいけん)は、幼(おさな)かったじぶんが悪(わる)いのではなかった」
「あのとき本当はこう言いたかった。そしてそれをうけとめてほしかった」
じぶんのそういう気持(きも)ちや考(かんが)えを知(し)って、じぶんの本当(ほんとう)の気持ちをうけとめてあげること。
そして今度(こんど)は親(おや)になったじぶんが、
「あのころのじぶん」
がしてほしかったように、
「子どもの声(こえ)を聴(き)き、それをうけとめていっしょに考(かんが)える」
そういうことが、子どもさんの心を救(すく)うと同時(どうじ)に、お父さん・お母さんが
「本当(ほんとう)のじぶんらしいじぶん」
だとか
「本当(ほんとう)のじぶんらしい生き方」
を発見(はっけん)するきっかけになっています。