カウンセリングルームブログでよく読まれている記事ランキング
2013年11月から開設している『さいとうカウンセリングルームブログ(旧:さいとうメンタルクリニックブログ)』内の60余りある記事のうち、
もっとも読まれている上位10個の記事をはてなブログ用にリライトし、10位からひとつづつ掲載していっています。
まず、10位までのランキング(2017,8,10調べ)をご紹介します。
(*リンク先はリライト後のこのブログ内の記事です)
1.娘から絶縁 修復できますか? 17,915
2.学校を辞めたいという子 17,731
3. 後追い息子、育て方間違い? 17,570
4. 発達障害、どうして? 15,452
5. アダルト・チルドレンだと何が問題? 13,919
6. 子どもにキレそうな時、どうしたら抑えられるでしょうか? 8,250
7. お母さんの自立(親離れ) 7,437
8. “アダルト・チルドレン”② 『子ども時代に負わされた“心の傷”の責任を、自分から完全に切り離す作業』の重要性 7,341
9. 母親が重荷です 6,189
10.“アダルト・チルドレン”① 『認識されにくい虐待』 4,767
はじめに
「(Q&A)学校を辞めたいという子」が2位であること。
それは、いかに学校を辞めたい、つらい、と悩む子どもさんが多いかという現実にほかなりません。
8月31日、NHKの夕方のニュースでも「夏休み明け、子どもの自殺が増える」ことについて、街頭インタビューを交えた報道があっていました。
“もし、お子さんが学校に行かない、行きたくないと言い出したら”という問いに、
「無理やり行かせます」
「行かないと将来大変なことになる」
と答えるお父さんやお母さんの映像が流れました。
また、ブログやSNSなど多方面で「逃げろ」「逃げていい」と呼びかけられました。
呼びかける方から絞り出されるメッセージの多くは、ご自身のつらかった経験からの思いが込められているようにボクは受け止めました。
そう言える大人がひとり、またひとりと増えることが、子どもたちが追い込まれることにブレーキをかけるだけでなく、この問題が深刻であること、改善させる何かがあることを世の中に浸透させる働きをしてくれるのではないかと思います。
一方で、次のようなツイートを目にしました。
「学校は行かなくていいよ」「逃げたらいいよ」のメッセージに感じる微妙な違和感がわかった。
— Nikov (@NyoVh7fiap) 2017年8月31日
逃げたあとの責任は誰が取ってくれるのか? 子どもには想像できない。
社会が逃げる場所を作って「大人が逃がしてあげる」のが正解だと思う。
追い詰められた子どもは自分で判断する力も残ってないから。
とても反響が大きく、問題点を鋭く捉えたコメントを読んでうなずくばかりでした。
子どもに責任を押しつけず、社会や親が責任を果たすことの必要性について述べられたものが多いようでした。
「子どもには責任はない」
それはボクが臨床経験を通して身にしみて実感していることです。
かつて子どもだったボクたちの多くも、本来は負わなくてよかった責任を負ってきました。
「学校がつらいと思う自分、将来に希望が持てない自分には価値がない」
「学校を辞めたところで生きる道は閉ざされる」
そう思い込むのは、
- 独自の気質や個性が正しく受け止められず、自己否定感・劣等感が支配する
- 社会や親の標準や期待を押しつけられ、多様な生き方・選択肢を知らされず、閉ざされている
- 生い立ちの中で、すでに心にダメージを受けて気力も居場所もない
といったことから抱える絶望感がもたらすものであり、やはりそこには子ども自身の責任はないと思うのです。
そのような人や過去にあえて意識を向けることで、もう少し大人と当事者である子どもたちとの温度差を埋めることができないだろうか、
そう思います。
具体的には、
子どもさんの様子から、少しでも早い段階で適切な判断と選択がなされること、
その子の気質に合った環境・方法・ペースで その子の才能や個性を生かせるスキルを身につけることの価値が高まること、
などが叶えられたら有難い。
それにより、親御さんと子どもさん本人の選択肢の幅が広がり、ゆとりや希望が生まれるのではないかと思います。
ボクがこのブログの「第三章 学校へ行きたくないあなたへ」で、学校に行かなくていいと思う理由など12の記事を書いたのも、そのような思いからでした。
当事者である子どもさんに読んでほしいと思う以上に、その親御さんや子どもさんと深く関わる方々に読んでもらえたらどんなにいいだろうと思って書きました。
「逃げる(離れる)」かどうかは “点” での話。
「逃げる(離れる)かどうか」に至る前と後という点と点は線でつながります。
線でつないだ部分にある問題を含め、この問いについて深く考えてみたいと思います。
【目次】
Q.
高校生の子どもが高校を辞めると言い出しました。
理由を聞いても「行く意味がない」としか言いません。
何かやりたいことがあるわけでもなく、中退後はアルバイトをするとのこと。
子どもの気持ちがよくわかりません。
何かアドバイスがありましたら教えて頂きたいです。
A.
「辞めたい」の背景にあるもの
子どもさんが「学校に行きたくない、辞めたい」という時、
- 子どもさんの対人関係を含め、学校という環境に何か息苦しさを感じているのか
- 学校という組織や集団に合わせることに対して強い違和感や拒絶感を感じている(自分の気質に合っていない)のか
- 期待に応えようと頑張ってきての息切れか
- 自分のこれからの方向性に希望を見失っているのか
というところを見ていきます。
例えば、
人間関係でうまく付き合っていけない
集団に圧倒される
ギクシャクしている
いじめられている・クラスにいじめがある
授業についていけない
学校の方針と合わない
漠然とした形でやる気が起こらない
つまらない
自分が求めているものがここにない
何のために生きているかわからない
人生の分岐点に立ち止まって考えたくなっている
など。
子ども自身が「辞めたい」動機を認識しづらい理由
しかし子どもさん自身、焦りや不安、慢性的な疲労感や無力感・絶望感に支配されていて、その動機までは自分でも意識できていないことがあります。
そのため、子どもさんから原因(特に人間関係の悩み)について聞き出すことは、非常に難しく、ご本人も自分の苦しみについて話したところで、それを受け止めて解決に導いてくれる人(大人)がいないことを察知していて、あきらめているケースが多いのです。
大切なことは、この子が今何を考えているのか、何に苦しんでいるのかということを、一緒に立ち止まって感じてみる、子どもの目線に降りて考えてみる姿勢です。
「行く意味がない」という言葉の真意
考えておきたいことは、子どもさんの
「行く意味がない」
という言葉の真意です。
ここには、社会や親御さんのしつけや管理のもと、やらされる体験が積み重なって、社会や親御さんのレールに乗っかったまま生きてきたことで、生きている実感や方向性を見失って、無気力、あるいはそれに近い状態になっている可能性が存在するということです。
立ち止まって家族で向き合う時間の確保の必要
問題は幼い頃から自発性を尊重されて、自分でやり始めるまで待ってもらえてきたか、 それともやらされてきたかというところです。
社会や親が描いた理想や期待を引き受け、従うばかりでいると、子どもの自主性・主体性が養われず、自分らしさが育ちません。
子ども時代は子どもが自分からやろうとする『自発性』と、自分の意志で考え判断して行動するという『主体性』が、その子らしさを育ませるためにとても重要で必要なものなのです。
子どもは、本来自分らしく生きるための自主性・主体性を発揮する力を持っています。
その力が今の家庭において妨げられていないかを見ていく必要があります。
そのことを親御さんがしっかりと理解したうえで、
「子どもが今何を感じているのか」、
「何に苦しんでいるのか」、
「『言葉にならない心の叫び』を出して自分に何を訴えかけているのか」、
ということに注意を向け、
そして目先の目標からいったん離れ、
「子どもさんのみならず親御さんも、自分の心に従って判断し、行動していくための自由さを伸ばすことのできる時間を十分に取りながら、子どもさんとともに考えていく」
ことの重要性を、同じようなケースのお父さん・お母さん方にお伝えしています。
親御さんが子どもさんの気持ちがわからないと思う時、それは親御さん自身がご自身の心の中が見えていない、また子どもさんからも親御さんの心が見えなくなっている時でもあるのです。
それは、親御さんが実際に感じていること思っていることを表現する習慣がないとか、何を感じて、何をしたいのかがわからない、漠然とした形で生きてこられている、ただ義務感だけでこなされている、ということを意味していたりします。
見えなくなった心の中と、親となった私たちが育った環境との関係
ここで注目すべきことは、親御さん自身の育った環境が、
- 子どもの気持ちや立場を汲み取って、受け止めて包み込んでくれる、安心感を得られる母性に乏しい
- 子どもの気持ちや訴えよりも、親の都合を優先した、上に立つ人の都合の良い見方・考え方を強いられていた
- 自由な自己表現や自己主張をさせてもらえない
といったものでなかったかということです。
そのような環境が今の家庭においても再現され(受け継がれ)、
自分にとって都合の良くない気持ちや感情を見ないように存在しなかったように振る舞ったり、心の奥底に押し込んだりして、
「本当は何を感じているのか」
「本当は何をしたいのか」
など自分の心の中を見る習慣がなくなっているために、自分の心の中が見えなくなっているということ。
「本当は関わりたくないのに、無理して義理の家族に合わせているお母さんの姿」
「内心、本当は仕事に行きたくないのに、嫌々出勤しているお父さんの姿」
など、
主体性や方向性を見失いつつあるお父さん・お母さんの姿や、お父さん・お母さんの無意識の中で行われているご自身の性格や気質に合っていない関係性や環境選択に対する“拒絶”が、子どもさんの
『登校を滞らせている状態』
『学校に対する“拒絶”』
と重なって見えることがあるのです。
「親は、子どもの姿に、子どもの頃の自分の姿が重なり、過去のことと思っていた自分の中の本当の思いや感情体験を再体験する」
これは、子育て中の親御さんに実際に起こっていることなのです。
「あのとき本当はこう言いたかった、こうしたかった、こうなりたかった。そしてそれを受け止めてほしかった」
親御さんご自身が、生い立ちの中にそういう気持ちや考えがあったことを知って、自分(インナーチャイルド)の本当の気持ちを受け止めてあげること。
そして今度は親になった自分が、「あの頃の自分」 がしてほしかったように、「子どもさんの声を聴き、それを受け止めていっしょに考える」
そういうことが、子どもさんの心を救うと同時に、親御さんが 「本当の自分らしい自分」 だとか 「本当の自分らしい生き方」 を発見するきっかけになっています。
高校を辞めるか辞めないかの選択や決断までの話し合い自体が、親子の絆を育み直すための、大切な分岐点ではないかと思います(過去記事『学校に行かないと将来どうなるか』も合わせてご参照下さい)。
さいごに
心の中の、蓋をしてきたいろんな気持ちに気づき、その本当の声を伝え合うこと、真剣に向き合うことが必要なのではないか…
心配を超えて、もっと大切なものに気づけないだろうか…
お互いに後悔や不信の残らない選択をしながら家族同士の絆が育める環境を築いていくことができないか…
そういうことを今、子どもさんがその存在をかけて親御さんに働きかけているのではないでしょうか。
最後までお読み下さりありがとうございました。
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