カウンセリングルームブログでよく読まれている記事ランキング
2013年11月から開設している『さいとうカウンセリングルームブログ(旧:さいとうメンタルクリニックブログ)』内の60余りある記事のうち、
もっとも読まれている上位10個の記事をはてなブログ用にリライトし、10位からひとつづつ掲載してきました。
10位までのランキング(2017,8,10調べ)をご紹介します。
(*リンク先はリライト後のこのブログ内の記事です)
1.娘から絶縁 修復できますか? 17,915
2. 学校を辞めたいという子 17,731
3. 後追い息子、育て方間違い? 17,570
4. 発達障害、どうして? 15,452
5. アダルト・チルドレンだと何が問題? 13,919
6. 子どもにキレそうな時、どうしたら抑えられるでしょうか? 8,250
7. お母さんの自立(親離れ) 7,437
8. “アダルト・チルドレン”② 『子ども時代に負わされた“心の傷”の責任を、自分から完全に切り離す作業』の重要性 7,341
9. 母親が重荷です 6,189
10.“アダルト・チルドレン”① 『認識されにくい虐待』 4,767
はじめに
いよいよ「よく読まれている記事ランキング1位」の紹介になりました。
このランキングは、どれも内容が濃厚なだけに、リライトにもかなりの時間を要してしまいました。
『娘から絶縁、修復できますか?』のPV数がグングン上昇し始めた頃、想像以上の関心の高さに複雑な思いでした。
そして、ここ1~2か月で1位に上り出ました。
本やSNS、ブログによる情報が増え、『毒親』『毒母』というワードも浸透しています。
またドラマやドキュメント、ワイドショーなどからもその実情を認識する機会が増加しています。
果たしてこの記事を読まれた方々は、お母さんだったのか、それとも娘さんの方なのか・・・、
それぞれの思いがぶつかり合い、すれ違い、交錯する『絶縁』の問題とその先のことについて、もう一度向き合ってみます。
Q.
娘から絶縁すると言われてから2年になります。
その後音沙汰なく、私も連絡を控えています。
「自分はアダルト・チルドレン、情緒不安定さや生きづらさは、母親である私の影響だ」と責められ続けました。
何度も詫びたのですが、娘の気持ちはおさまらず、「許せない」と言って離れていったままです。
娘は私にどうしてほしかったのか、どうしたら許せるのか、答えが見つかりません。
娘からは「関わってこないで」と言われていますが、それを尊重するのが親の務めなのか、それとも修復は可能なのか、いかがでしょうか?
A.
娘さんはどんな子どもだったか
娘さんの気持ちがおさまらないというのは、子どもの頃から押し殺してきた感情が、少なくとも2年前から溢れ出てきている現象(遅すぎる反抗期・第3次反抗期?)と捉えることができます。
娘さんは子どもの頃、どんな娘さんだったでしょうか?
期待に応える子
がまん強い子
聞き分けの良い子
手のかからない大人しい子
反抗期らしいものがなかった
など、感情を溜め込みやすい子どもさんではありませんでしたか?
お母さんの子どもの頃は?
一方でお母さんの子どもの頃はどうだったでしょうか?
「私は反発していた時期があった」と言われるかもしれません。
もしくは、「私たちの時代は、どうのこうの言っておられる時代ではなかったよ。生きることに必死だったよ」と言われるかもしれません。
問題は、幼い頃から子どもが子どもなりに抱いた感情を、母親からきちんと受け止めてもらっているかということなのです。
例えば、
さびしい時に包み込んでもらえたか、
泣きたい時に泣かせてもらえたか、
怒りたい時にその理由や気持ちを受け止めてもらえたかということ。
「わがままな子に育たないように」
「甘やかされた子に見られないように」
「がまん強い子に育つように」
などを理由に、子どもの気持ちよりもお父さん・お母さんのご両親をはじめ身内の人たちや関わる人たちからの見た目、体裁、世間体が優先されて、子どもの気持ちや感情が受け止められないケースが多いのです。
「さびしい? 大丈夫、大丈夫」
「悲しくない」
「怖くない」
「痛くない、お兄ちゃんだから(もうお姉ちゃんになったのだから)我慢しなさい」
「もっと大人になりなさい」
「よそ様が見ているよ、恥ずかしいよ」
「そんなことで怒らない」
といった言葉が投げかけられているのが実際です。
心の事実を切り離す習慣とアダルト・チルドレン
このような言葉で、自然に湧いた感情を感じちゃいけないものとして抑え込みながら育った子どもは、知らず知らずのうちに自分にとって都合の良くない感情を見ないように蓋をして隠したり、流したり、感じないように押し殺したり、麻痺させたり、あるものをもみ消したり、無かったことと言い聞かせたりして、「無いもの」として心の奥底に押し込めてしまうという『心の事実を切り離す習慣』が身についてしまうのです。
娘さんのおっしゃるアダルト・チルドレンの源がここにあります。
娘さんは、生きづらさを実感され、ご自身がアダルト・チルドレンに当てはまっていることを自覚された。
その原因が生まれ育った家庭環境、特にお母さんとの関係にあるということに気づかれたのでしょう。
幼い頃から身につけた、あるいは、親から受け継いだ、自分のことを後回しにする自己犠牲的な生き方の習慣によって、大人になっても対人関係で言うべきことを言えずに、例えば、本当は嫌なのに嫌と言えずに、感情のしこりを残します。
そしてその感情のしこりによって情緒が安定せずに、夫婦間・親子間のみならず対人関係で様々な問題を抱えやすいことで生きづらさを感じるようになります。
この、アダルト・チルドレンの方に特徴的な生きづらさは、自分の心の中に湧いてきた本当の気持ちや感情を表現することは、人間関係に悪影響を及ぼす邪悪なものと信じ込んでいる“幻想”から起こっていると言えます。
つまり、「自分の気持ちや感情よりも、相手やまわりの人たちからどう思われるかが優先される」という生き方です。
そのため、その時に湧いた感情を表出できずに閉じ込めてしまうのです。
アダルト・チルドレンとは、「子どもの成育に悪影響を与える家庭環境の中で育ち、成長してもなお精神的影響を受け続ける人々」と定義づけられていますが、その本質は、
「子ども時代に受けたトラウマ(心の傷)の後遺症」と
「その方が育った家庭環境に適応していく中で身についた(負の影響をもたらしている)生き方・考え方の習慣」
「長い歴史の中で受け継がれた(負の影響をもたらしている)生き方・考え方の習慣」
であって、それによって葛藤や感情のしこりを抱えやすい人、と捉えてもらった方が良いかと思われます。
ですから、娘さんのように生きづらさなどの苦しみを、親やその親に影響を与えてきた人たちのせいと考えるのは無理もないのです。
「いい年をして自分の未熟な部分を親のせいにするな」
といった意見があることも事実です。
しかし、アダルト・チルドレンの方の家庭に受け継がれている“当たり前”で“常識”だと思われている考え方、
例えば、
「こうすることが私(親)の務め」「この子のため」「良いことだから」「これがうちのやり方」
などは、常に
「親や上に立つ人中心の、偏ったものの見方・考え方が標準」になっていて、『対等性』や『平等性』が失われているため、一方的な押しつけとなって、子どもや下の立場となる人(お嫁さんなど)の気持ちや存在が粗末にされやすく(尊重されにくく)なっているのが実際です。
人は、この『対等性』『平等性』のない環境や状況に置かれて、その環境や状況から離れることができない時に、葛藤が起こります。
そして、自分にとって都合の良くない負の感情を見ないように蓋をしたり、あるいは感じないようにしながら、心の事実を切り離す習慣が身について、感情のしこりを残していくのです。
お母さんは娘さんとの関係をどうしたいか?
ではご質問の中の、娘からは「関わってこないで」と言われていますが、それを尊重するのが親の務めなのでしょうか? という問いについてです。
まず、お母さんは娘さんとの関係をどうしたいと思っておられるでしょうか。
- 娘さんの気持ちを理解して関係を修復したい
- 娘さん次第
- 現状維持でもかまわない
それによって答えは変わります。
ここでは、「娘さんの気持ちを理解して関係を修復」することを望み、そのための努力をしたい、というお母さんに向けた答えになります。
どうしたら娘さんの心が「うん」というのか
娘さんの生きづらさなどの苦しみは、娘さんの、持って生まれた気質の影響も考えられますが、無力でまだ自分を守る術(すべ)を持ち得ない子ども時代に、生まれ育った家庭環境や親御さんによってもたらされたものの方が明らかに大きいと考えられます。
娘さんとしては、詫びてもらうことよりも、今まで自分に悪影響を与えてきた親御さんがその生き方・考え方に問題があったことを自覚してくれなければ、心が「うん」と言わないのかもしれません。
親御さんに改める気が無ければ、離れていくしかないという気持ちだったのではないでしょうか?
この問題解決のためにもっとも重要視しなければならないことは、
①「子ども時代からずっと心の奥に閉じ込めてきた欲求や心の痛み・心の傷と、それに伴う負の感情を解放すること」
そして、
②「その方が育った家庭環境に適応していく中で身についた(負の影響をもたらしている)生き方・考え方の習慣」
「長い歴史の中で受け継がれた(負の影響をもたらしている)生き方・考え方の習慣」に誰が気づいて、それについて深く認識し、それを断ち切っていけるかということです。
向き合う相手は娘さんではなくまずはご自身
その意味で、今お母さんに問われているのは、
取り残してきた、子ども時代のご自身の本当の気持ちや感情を、ご自身で丁寧に感じて受け止めてあげること。 そうすることで、子ども側の気持ち・目線まで降りて、子どもの立場で感じたり考えることができるようになれるか、ということ。
そして、
負の影響をもたらしている生き方・考え方を、お母さんの代で断ち切って、娘さん共々自立した道を歩んでいけるのか、ということ。
変わろうとしないお母さんから離れる娘さんたち
お母さんがそこに気づいて変わろうとしなければ、
娘さんご自身が、
相手に尽くすこと、相手を喜ばせる・慰めること、相手から褒められる・必要とされることで自分の存在価値を得ようとする
などの、
自己犠牲的な献身を強迫的に行って「お互いに縛り合う関係・習慣」
や、
「母親を喜ばせてきた・母親に尽くしてきた娘として、長女として、お姉ちゃんとして」などの役目・義務を引き受ける習慣、
から離れて(娘さんの方から捨てて)、
娘さんの代でその生き方・考え方の習慣を断ち切り、
子どもの頃から取り残されている“本当の自分らしい自分”を取り戻していくしかないのです。
修復はお母さんにかかっている
ここがなされない間は、いくらお母さんが心から娘さんに詫びたところで、繰り返される以前と変わらないお母さんの言動や行動パターンに対して、関わるたびに娘さんの怒りや許せないという気持ちはいっそう強められていくことが予測されます。
ですから、お母さんの変化や変わろうと努力している姿を、娘さんが感じられなければ修復の方向には向かうことは考えにくいと思われます。
お母さんご自身が今までの(負の影響をもたらす)自分を捨てて、変わって成長していけるか、精神的に自立した自分をつくっていけるかということ、それがこのご質問に対するひとつの大きな答えでもあります。