【インナーチャイルドの癒しは必要か?】 インナーチャイルドは「言い聞かせ」や「コントロール」に納得しない

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「過去が現在に影響を与えている。現在の問題を解決するためには、過去にさかのぼることが大切である」というボクの考えに対し、このような質問を受けたことがあります。

 

今抱えている自分の対人関係の問題は、過去の親などとの関係に起因しているとのことだが、過去にさかのぼらなくても、自分が強くなって感情や思考をコントロールできるようになれれば解決できるのではないか?

 

果たして自分の感情や思考のコントロールができれば本当に解決できるのでしょうか?

 

 

サバイバル・スキルとして身につけたコントロールの問題

前回のブログの記事「『いじめ』はどうしてなくならない」の中で触れましたが、対等性・公平性に欠いた関係性の中で、コントロールドラマのある家庭で育った人は、(*1)「コントロールされること」のトラウマを潜在的に抱えているため、「他人と比較して優位に立とうとする」「常に主導権を握ろうとする」などして心を安定させようとします。

つまり、自分をとりまく人や環境が自分に及ぼす力や状況を、自分の都合に合うように何とかコントロールしようとする“自己防衛機制”が働いているのです。

これは、コントロールというトラウマの中身(⦅*2⦆コントロール・パターン)をしっかりと認識して断ち切らない間はずっと続くものです。

これらは悲しいことに、与えられた関係や環境に適応していくために身についてしまったサバイバル・スキルでもあるのです。

 

(*1)コントロールされることがトラウマとなるわけ

HSC(Highly Sensitive Child)(後で解説)という、敏感で感受性が強く繊細で傷つきやすい子にとっては、虐待的な言葉や行為によって心の傷を負わされる体験だけをトラウマ(心的外傷)として見ていくのではなく、コントロールを繰り返し受けるという、【子どもの心への侵入】によるトラウマ(心的外傷)について、しっかりと認識していかなくてはなりません。

言葉の真意もよくわからない無力な子ども時代に、子どもにとって決して気持ちよく感じられない親の都合で考える価値観(言葉でなくても、ある出来事やその時の空気・雰囲気の中に込められたメッセージ性のあるもの)を押しつけられる・植えつけられる・刷り込まれる、または親の都合で考える価値観に当てはめさせるために誘導操作される体験は、子どもにとってはどれも、不本意な心への侵入であり、想像以上に心や自尊感情を踏みにじられる体験になるのです。

  

(*2)コントロール・パターン

・自分の満たされない欲求を、弱者(子ども)を利用して満足させる

・抑圧した怒りや憎しみを、弱者(子ども)にぶつける

・抑圧した怒りや憎しみを、叱責や干渉、あるいは(*3)共依存的侵入という形で弱者(子ども)へ向ける

・自分(親)の都合で考える価値観を、弱者(子ども)に押しつける

・自分(親)の都合で考える基準の枠に当てはめさせるために、弱者(子ども)を誘導操作する

・自分(親)の都合や要求に従わなければ(を満たさなければ)、見捨てるような否定的で拒絶的な言葉や、見捨てるような態度・素振りを、弱者(子ども)に与える(見せる)

 ※子どもさんを褒めることは大切ですが、子どもさんを褒めることに誘導が加わると、親や大人のイメージ通りになるように仕向けるという意図が加わることになりますから、これが日常化した場合、子どもさんの主体性(自分の意志・判断によってみずから責任をもって行動する力)を奪っていくという意味で、これも「コントロール」になります。                                                     また、共感性が高いHSCの子どもさんの場合だと、相手の期待を敏感に察知して相手の期待に応えようとする傾向が強いだけに、褒められることにプレッシャーを感じていることがありますので注意が必要です。

  

(*3)共依存

自分の心の中に閉じ込められた怒りや不満、恐れ、悲しみ、寂しさ、空虚感などの負の感情を紛らわすために、『あなたのために』『あなたのことを心配して』という空気を醸し出しながら、愛情や親切を名目として、『お世話をする』『面倒を見る』『聞かれてもないのに教える』というもの。

それは、負の感情を紛らわすための嗜癖(しへき)として、『お世話をする』『面倒を見る』『聞かれてもないのに教える』という一面だけでなく、相手の『お世話をする』『面倒を見る』『聞かれてもないのに教える』という行為の中から優越感を得ることにより、自身が抱える空虚感や無力感の穴埋めをしようとする意味合いも含まれている。

愛情の皮をかぶった侵入』であると言い換えられ、極めてわかりにくいコントロール(支配)であり、気づかないところで、強烈なしがらみで相手の人生を支配し続ける。

 

そのため、自分をとりまく人や環境をコントロールするのではなく、 ご質問にあったように、自身の感情や思考をコントロールするスキルを身につけよう、というところにたどりつくことが多いのです。

 

しかしボクは、感情や思考のコントロールは歓迎しません。

その理由を説明します。

 

感情や思考のコントロールを歓迎しない理由① 

HSPは感情や思考のコントロールが困難

例えば『職場の人間関係やママ友、夫の実家などへの苦手意識』を乗り越えようと、自分の感情や思考をコントロールしたとします。

まずここで、それが「できる人」と「どうしてもできない人」に分かれます。

「どうしてもできない人」は(*4)HSPである場合が多く、HSPの方の多くはその気質ゆえ誤魔化しきることができないのです。

さらにそのような気質は周りの理解を得にくいため、できないことに罪悪感や劣等感、自己嫌悪を抱えがちです。

 

(*4)HSP(HSC)

感受性が強く、人一倍敏感で繊細な人は、HSP(Highly Sensitive Person)、子どもの場合はHSC(Highly Sensitive Child)といって、5人に1人はこれに当てはまると言われています。

HSP(HSC)の特徴

①刺激に対して敏感である。

②場の空気や人の気持ちを読み取る力『共感する能力』に秀でている。

③人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。

④自分と他人との間を隔てる「境界」がとても薄く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。

⑤物事の本質を見抜く力・直観力がある。

⑥物事を深く考える傾向にある。

⑦自分のペースで思案・行動することを好む。

⑧モラルや物事の本質を重視する。差別や支配・不平等さを嫌う。そこに誤魔化しが効かない。

   

感情や思考のコントロールを歓迎しない理由② 

感情や思考をコントロールできても別の形や他の人で表れる

では「できる人」はどうでしょう。

 

自分の感情や思考をコントロールするとは、言い聞かせたり、ポジティブなイメージを吹き込んだり、他人のことと自分のことをしっかりと分けて切り離したり、思考で認知(考え方)を変えたりすることです。

自分をコントロールすることで、克服できた、生きやすくなったと思われるかもしれません。

しかし、自分が置かれている関係や環境が、対等性や安心・安全に欠けたものであれば、自分にとって都合の悪い負の感情や考えを、無意識の中に押し込むことで心を安定させようとするのです。

この場合、自分が置かれている関係や環境に適応していくために、抑圧した自分にとって都合の悪い負の感情や考えを、(*4)嗜癖(しへき)として紛らわしている(嗜癖に置き換えている)のが実際です。

ただし、共依存仕事ネットスマホなどの嗜癖として表れている場合は、問題として意識されることはほとんどないと思われます。

また、飲酒や喫煙を抑えたり断ったりしたとしても、別の形の嗜癖、例えば、問題として見られにくい共依存や仕事などの嗜癖として表れたり、それらの嗜癖が強められたりすることもあるのです。

 

【参考】仕事嗜癖(仕事依存症)になりやすい職業

「人の上に立つ」「人の役に立つ」「教える」「追究する」「世話をする」「面倒を見る」内容のもの。

例)教育、医療、介護、福祉、心理、接客 など

 

嗜癖として紛らわすことができない方や紛らわす術がない場合は、自身に身体的・精神的症状が出たりします。

 

また、敏感気質(HSP)の伴侶(パートナー)がいらっしゃる場合は、その伴侶(パートナー)にも嗜癖や症状が表れていることがありますし、その方に子どもさんができて、その子がHSCだった場合は、その子どもさんにも問題や症状が表れることがあるのです。

 

(*4)嗜癖アディクション

自分にとって都合の悪い、負の感情や考えや満たされない欲求を、紛らわすために身についた、『ある習慣への執着』。気晴らし程度に留まらず、それがなくては安定しないために、自分の意志ではやめることが困難なレベルに至っていること。

・人を介する嗜癖・・・共依存・恋愛・浮気・セックス・いじめ・虐待(侵入を含む) など、

・物に対する嗜癖・・・アルコール・薬物・ニコチン・カフェイン・食べ物(過食) など、

・特定の行動に対する嗜癖・・・インターネット・スマホ・ギャンブル・仕事・買い物 など、

 

【参考】嗜癖』と『趣味』との違い

嗜癖』と『趣味』との違いについては吟味が必要なところですが、目安としては、例えば、好んで習慣的に繰り返しおこなう行為・事柄やその対象(スポーツやサークルを含む)が気分転換やストレス解消発散レベルに留まらず、「いつもそのことばかり考えてしまっている」、「そのことが優先され、ご夫婦や子どもさんとの会話や交流が疎かになってしまっている」、ようであれば、積極的に『嗜癖』と捉え、優先順位を見直すこと、『嗜癖』の改善に取り組むことが大切です。

   

そのためボクは、感情や思考のコントロールを歓迎しないのです。

 

『自分をコントロールすることで問題を克服できたとしても、子どもや伴侶(パートナー)に影響が出るのが問題である』

これが、ボクのセラピーや発信の主軸です。

 

 

過去と他人は変えられない、変えられるのは自分と未来だけだ」 という言葉を耳にしたことがあります。

だけどボクは、「変えられる過去」と「記憶の中から消し去られていたり、頭で切り離したとしても、つきまとう過去」が存在すると思っています。

 

まず、「変えられる過去」とは、親との関係の中で身についたマイナスに働いている考え方や習慣を、自分にとってプラスになるものに、自分らしく生きるためになるものに換えることができるということ。

そして、

記憶の中から消し去られていたり、頭で切り離したとしても、つきまとう過去」というのは、過去をどんなに思考でコントロールしようとしても『負の感情や放置されたままの心の傷が、コントロールすることに同意しないという現象がつきまとう』ということなのですが、

このことは、その鍵となる『恐怖』という種の存在について触れながらご説明していきたいと思います。

 

『恐怖』という種

対人関係における苦しみや問題は、その方が気づかれていない、もしくは、意識されることの少ない、“人に対する『恐怖』(対人恐怖)”がベースとなっています。

『恐怖』にはさまざまなものがあり、それがトラウマの原因になるわけですが、

それは、身体的に痛みを負わされる恐怖とは限らず、

罵られる・けなされる・睨まれる・否定される・迫害される・バカにされるような言葉に対する『恐怖』だったり、

見捨てられる・放っておかれる・のけ者にされる・自分以外の兄弟姉妹を優先される空気・雰囲気に対する『恐怖』だったり、

子どもにとって抵抗不能な「躾」や「教育」という名目で一方的に侵入される、前述のコントロールされることに対する『恐怖』だったり、

するのです。

 

これは主に

子どもの生存本能や自己存在価値が脅かされる『恐怖』、

または、

心や自尊感情を踏みにじられる『恐怖』とも言えます。

 

その『恐怖』は、具体的には、その方の親や身内の序列的で上下のある不平等な関係性の中で、権利を多く持つとされている親や身内の年長者(兄・姉、そのほか祖父母・おじ・おば・いとこなど)から年少者に対して種のように植えつけられたものです。

 

その『恐怖』の種を抱えたままの(子ども時代のままの)親子・兄弟姉妹関係を今も繰り返していたり、親・兄姉といった身内の年長者以外の人との関わりにおいても相手が親・兄姉といった身内の年長者と置き換わり、同じような親子・兄弟姉妹関係が無意識に再現されることで、苦しみがもたらされています。

その『恐怖』の種によって、気持ちや感情は表出されることなく心の中に充満するからです。

 

置き換わりという現象

この、相手が親や兄姉といった身内の年長者と置き換わるという現象は特別なことではなく、無意識のうちに頻繁に起こっています。

相手に、親や身内の年長者と似ているところがないようでも、価値観が似通っていたり、相手が目上などの上下の関係性があると、知らず知らずのうちに親や身内の年長者と接する時と同じスイッチが入ってしまうような状態になるのです。

そして、トラウマを負わされてきた親や身内の年長者に対する怒りや恐れなどの負の感情を未解決のままにしておくと、それに気づくように、きちんと精算するようにと、心の奥底に潜んでいる負の感情や、放置されたままの心の傷が、その人たちと置き換わるような人たちを引き寄せるかのように、同じような関係性やそれに伴う苦しみが再現(再演)され繰り返されます。

これが対人関係における苦しみとして感じられていることなのです。

 

感情や心の傷が、コントロールすることに同意しない

見方を換えれば、過去のことを過去のものとして切り離そうとしても、『負の感情や放置されたままの心の傷が、コントロールすることに同意しないという現象がつきまとっている』、とも言えるのです。     

 

インナーチャイルド

子ども時代の「傷ついたままの子どもの自分」のことを“インナーチャイルド(内なる子ども)”と言いますが、

対人関係における苦しみや問題は、このインナーチャイルドが、今も親から受け継がれている縛られた価値観・教義の中や、コントロールドラマの中で窒息しかけていたり、親からの虐待的な言葉や行為によって心に傷を負ったまま放置されていることにもあります。

ですから、問題の改善・解決のポイントとしては、このインナーチャイルドが十分に救われたかどうか、インナーチャイルドが十分に納得したかどうか、ということが重要なのです。

 

感情こそが、本当の自分 

放置してきた感情を感じ直し、どんな感情でも拾える自分になることが、「本当の自分に戻る」ということなのですね。

 

インナーチャイルド・ワーク

ボクのセラピーでは、「今も浮遊し続ける過去のネガティブな出来事や体験」と「ネガティブな影響が与えられてきた関係性や過去の関係で身についたネガティブな習慣や考え方」を振り返り、「きちんと過去のものにする」、「自分らしく生きられるものにする」ことを行っています。

 

これが『トラウマ回復のためのセラピー』です。

 

つまり、過去のトラウマティックな出来事をしっかりと認識し、過去の関係性や生活習慣の中で抑圧してきた感情や本当の欲求を感じ、その時の感情や本当の欲求を解放することで『本来の自分らしさ』を取り戻し、自分らしく生きていけるようにするものです。

 

中でももっとも重要視しているのが、

幼い頃からの、解決されないまま浮遊し続ける負の感情や心の傷(心の痛み)を、過去にさかのぼって、ひとつひとつ拾い上げながら解放していくという作業です。

これは、生い立ちの中に置いてきた、傷ついたままの無力で幼いインナーチャイルドの声や体験、その時の気持ちをセラピスト(カウンセラー)と一緒に拾いながら語ってもらうことで、光にさらしていくというものでもあります。

これをインナーチャイルド・ワークと言い、

心の中に閉じ込めてきた不満や怒り・悲しみ・恐怖などの負の感情が、対人関係における苦しみや嗜癖・依存症の問題のほかにも、夫婦間不和の問題、子育てに関わる苦しみ、などを引き起こす原因にもなっているため、トラウマ回復のためのセラピーの中でもっとも重要な作業(ワーク)だと考えています。

中でも怒りの吐き出し(解放)は最重要です。

 

さいごに

自分を誤魔化せない敏感で繊細な気質を持ったHSP(HSC)の方が、全人口の15~20%の割合でいらっしゃるわけですが、

その中で、対人関係や嗜癖・依存症、夫婦間不和、子育てに関わる苦しみなどの問題を抱える方が、『トラウマ回復のためのセラピー』を施すことなしに、

自分自身をコントロールしようとしても、

気づかれることなく無意識(潜在意識)の中に閉じ込めてきたトラウマによる恐怖心の痛みに気づき、それを取り除いてその下にある怒りなどの負の感情が解放されない限り、どうしても問題の改善・解決がうまくいかないというようなことが多いと感じられるのです。

 

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ママ、怒らないで。不機嫌なしつけの連鎖がおよぼす病

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