HSCの気質に合わせた子育て

   f:id:saitomc:20180301125808j:plain

「先天的な気質」と「後天的な性格」の違い

子どもさんが生まれ持った先天的な気質』と、

親御さんとの関係(お母さんとの関係は、すでに胎内にいる時から)や育つ環境・社会環境の中で培われていく『後天的な性格』には、ギャップが生まれやすく、

このギャップがあまりにありすぎると、子どもさんの欲求や感情や主体性が押し潰されて、「生きづらさ」を抱えていくことになります。

 

HSC(Highly Sensitive Child)が持つ気質の特性として、目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、徹底的に処理してから行動するという神経システムがあります。

そのために、思慮深く慎重な傾向にあるのですが、

一般にHSCは、「内気」とか「引っ込み思案」とか「神経質」とか「心配性」とか「臆病」などとネガティブな性格として捉えられがちです。

しかし、「内気」「引っ込み思案」「神経質」「心配性」「臆病」な性格というのは、持って生まれた遺伝的なものではなく、後天的なものであり、

それらは、幼い頃に母親から引き離された体験が強い不安になって残る「愛着の傷」であったり、親からの支配や侵入や否定的言動などによる「トラウマ」が影響しているものと考えられています。

 

 

HSCに起こりやすい「ストレス反応」と「不適応」

またHSCは、外向性を重視する社会や敏感さが受け入れられにくい社会では、自分の気質に合わないことに対して、

ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応…「落着きがなくなる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「すぐにカッとなる」、「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)が出やすく、

感受性が強すぎ、繊細すぎるために、学校での環境や人間関係から強いストレスを感じてしまい、不適応を起こしやすいのですが、

親御さんや周りの大人の人たちが、

「ほかの子に遅れをとってはいけない」「おちこぼれてはいけない」

「早く社会性を身につけて適応させなくては、自立させなくては」

という考えに縛られていたら、子どもさんに対して否定的な言葉を浴びせたり、そうでなくてもその焦りが子どもさんに伝わって、

期待に応えられない子どもさんは、

「どうして自分にはできないのだろう」「どうして自分は、ほかの子と違うのだろう」

という思いが強まって、「自己否定感」や「劣等感」を抱えてしまいます。

 

 

HSCという気質の特性を知る

子どもにはそれぞれ個性や独自性が存在し、それぞれに得手・不得手があります。

中でもHSCは、細かいことに気がつき、過剰に刺激や情報を受け止めるため、疲れやすく、慎重で状況をよく観察してから行動します。

自分のペースで思索・行動することを好み、監視されたり、評価されたり、押しつけられたりすることを嫌います。

また、新しいことや初対面の人、人の集まる場所や騒がしいところが苦手で、慣れた環境や状況が変わるのを嫌がる傾向が見られます。

 

このようなHSCの生得的な気質である、

「小さなことを気にする自分」「ちょっとしたことに敏感に反応する自分」

「なかなか決断ができない、行動を起こすのに時間がかかる自分」を、

もっとも大切な人から肯定的に受け止めてもらえるか否かで、自分の気質をポジティブに捉えていくか、ネガティブに捉えていくかということについての影響は大きいでしょう。

 

HSCの場合は、親御さんや周りの大人の人たちがその子の気質の特性を知って、気質に合わせた育て方を行っていくか否か、さらには、その子とともに、気質に合った生き方(教育や職業など)の選択を行っていくか否かは、その子にとっての、その後の「生きやすさ」、「生きづらさ」にまで影響を及ぼしていくものと考えられるのです。

 

 

「生きづらさ」や「自己否定感」を抱えたHSC

HSCを持つ親御さんとして、覚悟しておいていただきたいことは、

HSCは「普通にできない」ということ。

例えば、集団に合わせることよりも、自分のペースで行動することを好んだり、ほかの子は問題なくできることを躊躇したり、小さなことを気にしたりしがちですので、

親は「もっと強い子に育ってほしい」「早く社会に適応してほしい」という思いから、苦手なことを克服させなければならないと考えてしまったりするのです。

そのため、

外向性を基準とする多数派の考え方・感じ方を強要してしまったり、

「あの子はできるのに、あなたはどうしてできないの?」

「そんな細かいこと気にしないの!」「クヨクヨ考えすぎ!」

「イライラさせないで!」「そんなことだと世の中渡っていけないよ!」

などの言葉で、気づかないうちに、子どもの気質を否定してしまったり、心に傷を負わせてしまったりすることで、

「生きづらさ」や「自己否定感」を抱えた多くのHSCに影響が出ているというのが実際のようです。

 

 

子どもの気質に合わせた子育て

HSCを育てる親御さんにとって、その子の気質やペースに合わせた子育てがもっとも重要で、その子に合わせるとは、その子らしさを育める家庭環境を整えることです。

また、教育や職業に関しても、学校や組織にこだわることなく、持って生まれた資質や個性が開花できるような、その子の身の丈(気質)に合った方法や環境を選択していくことが望まれます。

 

 

さいごに

HSCの気質が妨げられないような子育てには、世間(社会)の常識の枠に当てはまらない選択や判断が必要になる場面が多くなることが予測されます。

ある時は、世間や目上の人の期待や理想を裏切るように思えて、自分にはとてもできないと怖くなるかもしれません。

しかし、子どもさん側の気持ちに寄り添った正確な情報や知識を得ながら、親御さんが支えられ、励まされ、安心や助言を共有できるような場・つながりがあれば、子育てに安定がもたらされていくものと思われます。

HSCのことが書かれた書籍はまだまだ少ないようですし、HSCに対する世間の理解もまだまだと思います。

HSCについてもっと知ってもらいたい、考えてもらいたい、そういう意味で、私たちは『HSC子育てラボ』というサイトを立ち上げました。

 

f:id:saitomc:20180301212951j:plain

HSC子育てラボ

 

HSCを提唱したエレイン・N・アーロン博士は、著書『ひといちばん敏感な子』の中で、次のような言葉で、HSCを持つ親御さんを勇気づけてくれています。

「HSCを育てるのは大きな喜びです。確かに、自分の子どもが『他の子と違う』ことには複雑な気持ちになるかもしれません。でも『他とは違う子の親になるなら、他とは違う親になる覚悟が必要です』。これがモットーであり、私の座右の銘です」と。

(『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン著 / 明橋大二訳 / 1万年堂出版 P26-27より引用)

 

 

 

参考文献

『ひといちばん敏感な子』エレイン・N・アーロン/著、明橋大二/訳 一万年堂出版 2015

『子どもの敏感さに困ったら読む本: 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』長沼 睦雄/著 誠文堂新光社 2017