インナーチャイルド
子ども時代の「傷ついたままの子どもの自分」のことを“インナーチャイルド(内なる子ども)”と言い、
対人関係における苦しみや問題は、このインナーチャイルドが、今も幼少期から受け継がれている縛られた価値観・教義の中やコントロールドラマの中で窒息しかけていたり、尊厳を踏みにじられるような言葉や行為によって心に傷を負ったまま放置されていることにもあるということ、
そしてインナーチャイルドが、救われることを求めている限り、思考や感情はコントロールできない、もしくはできても違う形で影響が表れるということ、
を前回の記事でお伝えしてきました。
~また、敏感気質(HSP)の伴侶(パートナー)がいらっしゃる場合は、その伴侶(パートナー)にも嗜癖や症状が表れていることがありますし、その方に子どもさんができて、その子がHSCだった場合は、その子どもさんにも問題や症状が表れることがあるのです。
そのためボクは、感情や思考のコントロールを歓迎しないのです。
『自分をコントロールすることで問題を克服できたとしても、子どもや伴侶(パートナー)に影響が出るのが問題である』 これが、ボクのセラピーや発信の主軸です。
【インナーチャイルドの癒しは必要か?】 インナーチャイルドは「言い聞かせ」や「コントロール」に納得しない - あの日のボクへ
今回は、インナーチャイルドの息苦しさや傷が子育てに及ぼす影響に焦点を当ててお伝えしようと思います。
- インナーチャイルド
- 敏感で、親の心理をキャッチして連動しやすい子
- インナーチャイルドの訴えを拾う
- 子どもに映し出されるもう一つの意味
- ママと子どもの関係で再現される、ママの幼い頃の親子関係
- 子どもの心に悪影響を与える言葉や振る舞い
- 失われた子ども時代の本当の気持ちや欲求を感じ取ってあげる必要
- まとめ
- 書籍案内
敏感で、親の心理をキャッチして連動しやすい子
インナーチャイルドが息苦しかったり、傷を抱いたまま取り残されていると、そのインナーチャイルドが、自身における問題や症状だけでなく、敏感で親の心理をキャッチして連動しやすい子どもさんに同調するように子どもさんの問題や症状などとして映し出されることが多々あります。
その方の自分らしい本当の自分を取り戻すようにと(息苦しさと心の傷の回復を求めて)、子どもさんの問題(⦅*1⦆問題とされる行動)や症状を通して訴え続けるのです。
(*1)問題とされる、子どもさんの行動
不登校、引きこもり、過食・拒食、自傷行為、いじめ、家庭内暴力、万引きなどの非行 など
インナーチャイルドの訴えを拾う
映し出されていると思われる問題や症状を改善、または防ぐには、インナーチャイルドの訴えを拾えるようになること。
それが大事なポイントになるのですが、
自分で拾えるようになるまでは、どうしても子どもさんに映し出されるという事実に否認が起こりやすく、子どもさんを拒絶してしまいかねません。
ご自身のインナーチャイルドの訴えを拾えない状態では、親や大人側に立ったものの見方になっていて子どもの目線に降りることができていないため、子ども側の気持ちがわからないのです。
ですから、初めは、子どもさんの、気になる言動や態度・症状をよく見て、何を映し出しているのかつなげていくことで、インナーチャイルドの訴えに気づき、それを受け止めていく、ということを繰り返し行っていきます。
子どもに映し出されるもう一つの意味
子どもさんに映し出されるのにはもう一つ、
子どもさんがその子らしく健康に育っていけるように、親御さんが未解決の問題を抱えているなら早く解決してほしい、
というメッセージが含まれているとも捉えられます。
ママと子どもの関係で再現される、ママの幼い頃の親子関係
とはいえ、何がどのように映し出されるのか、再現されるのか、具体的な例がなければ中々捉えにくいと思います。
日常的な出来事の中からひとつ、再現のパターンを紹介します。
例えば買い物中、
“欲しいものを買ってもらえずに泣きわめく子どもをお母さんが怒る”
そんな親子の様子を見た時、どのような気持ちになるでしょう。
あるお母さん(Tさん)は、その場面を見た時すごく不快な気持ちになったそうです。
「お菓子くらい買ってあげたらいいのに」
「あんなに怒られて、あの子かわいそう」
「見ているだけでどうにもできない場面を見せられて嫌な気持ち」
と心の中で思って家に帰りました。
帰宅直後、荷物の片付けなどで忙しいのに子どもさんが立て続けに「あれして、これして」と畳みかけてきました。
Tさんは応じられず、何度も「もう少しだからちょっと待って」と言いますが、子どもさんは待てずにぐずり始め、だんだんエスカレートしていきました。
Tさんはたちまちゆとりが無くなってイライラし、気がつくと子どもさんを怒ってしまっていました。
その時ふと、「私、さっきのお母さんと同じだ」
と思ったのだそうです。
Tさんは子どもの頃、買い物の時に駄々をこねて怒られたことや、思いが通らず悔しい! 悲しい! と思った経験がありました。
その時の再現を買い物中、目の前で見せられたことでインナーチャイルドが反応した、と捉えられるのです。
買ってくれたっていいじゃない!
怒るなんてひどい!
もっと優しくして!
そのインナーチャイルドの声に同調するかのように子どもさんが、
やってくれたっていいじゃない!
怒るなんてひどい!
もっと優しくして!
と言いたくなるような状況が招かれたというわけです。
この場合、TさんはTさんの幼少期当時のお母さん、子どもさんは幼少期のTさんである、という構図での再現です。
Tさんは気づきました。
小さい頃、私も本当は「買って(やって)くれたっていいじゃない! 怒るなんてひどい!もっと優しくして!」と訴えたかったんだな。
それにお母さんにそれを受け止めてほしかったんだな。
記憶の中の些細な日常の一幕でしかなかったはずのことに対して、今になって反応が起こることを知って、Tさんは改めてインナーチャイルドの存在を実感したのでした。
このように、ご自身の親との関係の中で起こったことやご自身に及ぼしている負の影響が未解決のままだと、その親との関係が子どもさんとの関係に映し出される、という現象は特に頻繁に起こります。
本当は親からされたり言われたりしたことが、自分にとって、とても理不尽なものだったのに意志表示できず、気持ちを抑えてしまったままだったことがあると、
子どもさんの、「問題とされる行動」とまでには至らなくても、子どもさんが言うことを聞かないなど、(*2)「親を困らせるような行動」を子どもさんが取った時、
ママ(パパ)自身が子どもの頃に親からされて嫌だったことを(同じように)我が子にしてしまうのです。
例えば、
親と同じような口調(圧力や恐怖を与える)で我が子を叱責してしまう、
または叩いてしまう、
親の価値観を我が子に押しつけてしまう、
などなど。
まるで、幼かった頃の、心の傷(負の影響)となった体験(親からの言葉や態度)を、確認でもするかのように「私=親、子どもさん=幼い自分」に置き換わった状態で、再現(追体験)しているかのようなものです。
(*2)親を困らせるような、子どもさんの行動
中々止めない、同じことを繰り返す、一つのことにこだわる、しつこく絡んでくる、だだをこねる、落ち着かない、怒りっぽい、やたらと泣く、やたらと何かをこぼす など
子どもの心に悪影響を与える言葉や振る舞い
「言うことを聞かない子に対して、きちんと叱って躾けることが親の務めである」
「自分も親になって、あの時の親の気持ちがよくわかる」
という言葉をよく耳にします。
できれば親の気持ちや立場での見方に留まってほしくないのです。
もう少し丁寧に拾ってみると、「親の気持ちがわかる」というのは「親はどうして言ったのかがわかる」に言い換えられます。
では、果たしてそれは、親が子どもに言って良いものかどうか、あるいは、親が子どもを叩いて良いものかどうか。
- もしも子どもの知力・言語力・腕力が、親である自分より勝ってたら、そのような関わり方をしたかどうか、
- 子どもが親なしでは生きていけないという非力な立場であるということをどこかでわかっていて、そのような関わり方をしているところはないか、
- その時の表情や態度は子どもの心に『恐怖という種』を植えつける(前回の記事の【インナーチャイルドの癒しは必要か】の『恐怖という種』のところをご参照下さい)悪影響を与えるものではなかったか、
そこをしっかりと吟味することが大切なのです。
【Check】
ついつい言ってしまう、“親と同じこと”にはどういうセリフがあるでしょう。
『何やってるの(何してるの)』
『いい加減にして』
『わがまま言わない』
『もう知りません』
『そんなことぐらいで泣かないの』
『いつまで怒ってるの、みっともない』
『だまって親の言うことを聞いておきなさい』
『お友だちや下の子に貸して(譲って)あげなさい』
ママ(パパ)は大変だから言ってしまう。
その時、親も大変だったのだなぁという、親の立場や気持ちがわかる。
しかし、子ども(子どもだった自分)には子どもの気持ちやペース、自発的な意志、欲求、そして選択する権利や決定する権利があるのです。
子どもが『お父さん、お母さん、私を産んで(私を作って)』とお願いしたわけではありません。
子どもは親(の行為)によって“生まれさせられた”(I was born by my parents)、
これが事実です。
だからそこに親の責任が発生するのではないでしょうか。
ですから、例えば子どもが親に自分の気持ちを受け止めてもらう、子どもが親に甘えさせてもらうのは、子どもの当然の権利ですし、子どもをつくった親には子どもの気持ちを受け止める責任、子どもの欲求を満たす責任があるのだと思います。
そういう子どもの存在を最優先にするという、「子どもをつくった親としての責任」を中心にして見てみると、
子どもにとって一方的な指示や否定と取れるこれらの言葉は、たとえそれが、その時親にとっては重要なことであったとしても、子どもにとって、納得感のないまま押しつけに感じられるものだったり、恐怖を伴うものだったり、自尊心が損なわれるものだったりした場合、子どもに悪影響を与えるものであることに気づかれるのではないでしょうか。
失われた子ども時代の本当の気持ちや欲求を感じ取ってあげる必要
現在子育てをしている私たちの子ども時代はというと、やはり
本当の気持ち・個性・ペースが汲み取られることよりも、親や社会の都合、そしてそれぞれの理想を押しつけられるような育てられ方をされてきたという現実があります。
つまり、私たちに表れていた症状や、親を困らせるような行動も同じように、『言葉にならない心の叫び』だったのです。
だからこそ、失われたその時の子ども時代の本当の気持ちや欲求を感じ取る必要があるのです。
まとめ
インナーチャイルドの息苦しさや傷は子育てにどう影響するのか?
まとめると、
「生い立ちの中で起こった出来事から受けた心の傷(インナーチャイルドが抱えたままの恐怖や怒り)」が、過去のものとならずに“現在”という時間の中で浮遊していると、大人になった今も、ママ自身とわが子との間で、「未解決のままになっている出来事」が再現されて、『未解決のままだ』ということに気づかせようとする。
つまり息苦しさや傷の存在に気づいて、本当はどんな気持ちでどうしてほしかったか、どうしたかったか、という具体的なニーズが受け止められるまでは、ご自身や子どもさんの問題や症状だけでなく、わが子に対して親が自分に取ったような言動や態度を同じように取ってしまう「再現」が繰り返されるということなのです。
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