以前、上の記事の中で取り上げたのですが、
HSC(Highly Sensitive Child)・HSP(Highly Sensitive Person)には、
ポジティブな面・ネガティブな面を含めて、とても豊かな特性が認められます。
しかし、HSCの生活の場が家から学校に移った途端、
その*ポジティブな面は影を潜め、ネガティブな面が多く表に出てきてしまいやすいと言っても過言ではないかと思われます。
*ポジティブな面…鋭い感性と想像性に富み、人の気持ちに寄り添ったり、その場の空気を読み取ったりするなど、思いやりや共感力・直感力に優れていて、繊細で細かい気配りができる。
今日は、そのようなところをクローズアップしながら『HSCにとっての学校』と題して、お話しさせていただきたいと思います。
社会性と個性(自分らしさ)のギャップ
HSCにとって学校生活は負担が大きく、園や学校への「適応」は簡単ではありません。
エレイン・N・アーロン博士によれば、子ども全体のほぼ5人に1人がHSCに該当し、そのうちの7割は内向的なのだそうです。
内向的な人というのは、刺激の強すぎない環境を好む性質であり、内面の世界に意識が向いていて、自分の感じ方を大切にする人とも言えます。
そして、その多くがご自身の家族や家庭に幸せ感を求めているものがあるように感じます。
またHSCは、集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好みます。
これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。
さらにHSCは、新しいことや初めての場所、人が集まる場所や騒がしいところが苦手だったり、予想外のことや変化を嫌がる傾向にあります。
そのために、刺激が多すぎる学校生活は不安でいっぱいで、とてもつらいものと感じられることが多く、HSCにとって新しい世界、特に園や学校という世界に入っていくのは、茨の道を歩いていくことを意味すると言われているくらいです。
外向的で強い子も、静かでおとなしい子も、HSCにとって、新しい世界、特に学校という世界に入っていくのは、茨の道を歩いていくことを意味します。
多くのHSCは、「家にいた時は幸せだった。親は優しくしてくれた。でも、学校は地獄だった。いまだにその傷が残っている」と言います。
「ストレス」や「トラウマ」を抱えやすいHSC
またHSCは、物事を始めたり、人の輪に加わったりするなど、行動を起こすのにも時間がかかります。
これは目の前の状況をじっくりと観察し、情報を深く処理(大丈夫かどうか確認)してから行動するためです。
そのほか、ちょっとしたことを気にしたり、刺激を受けすぎて疲れやすく、圧倒されたりすると、落着きがなくなったり、言うことを聞けなくなったり、物事がうまくできなかったりします。
恥ずかしさや刺激が多すぎて不安を感じる状況や環境では、冷静さや自制心を失って、その子が持っている本来の良さや力が発揮できなくなるのです。
その気質の特性への認識がHSCに関わる大人の人たちに共有され、慣れるまでのそれぞれに合ったやり方やペースが尊重されると安心ですが、そうでない場合、「自己否定感」や「劣等感」、「ストレス」を抱えやすく、さらには「トラウマ」まで抱えることもあります。
特に幼い頃に母親から無理に引き離された経験は、HSCにとって「トラウマ」になる(強い不安となって残る)傾向があるのです。
さいごに
現実には多くの学校は、多数派の占める外向型の子どもたち向けにつくられています。
社会も多数派の人の在り方を基準につくられています。
社会性や外向性を重視する環境や、敏感さが受け入れられにくい環境では、敏感で繊細な感受性という気質を持ち、内的生活に価値を置く子ども(HSC)だけでなく、大人(HSP)にとっても、環境と気質が相容れず、少数派はさまざまな不利を強いられるため、不適応を起こしやすいのです。
また、その中で豊かな個性が認められなかったりして、自分らしく育つ(生きる)のが非常に難しいのです。
参考文献
『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン/著、明橋大二/訳 一万年堂出版 2015
内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える (講談社+α文庫)スーザン・ケイン/著2015