知っておきたい「心理的虐待(しんりてきぎゃくたい)」に当たること

             

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学校のことで悩(なや)みを抱(かか)えている子どもさん、そしてお父さん・お母さんへ

ということで発信(はっしん)してきた第三章(だいさんしょう)

全12回を予定(よてい)しているので、あと3回となりました。

 

第三章「学校へ行きたくないあなたへ」では、学校について書(か)いていることも多いですが、これは学校を批判(ひはん)するためものではありません。

 

それよりも、学校という存在(そんざい)の特徴的(とくちょうてき)なところが合わない気質(きしつ:にんげんがそれぞれにもつ、心やからだのせいしつ)や個性(こせい:それぞれがもつ自分らしさ)の子がいる

 

ということを知(し)ってもらい、もっともっと選択肢(せんたくし)の幅(はば)が拡(ひろ)げられるのが当たり前、という世(よ)の中になってほしい。

 

そういう願(ねが)いを込(こ)めて書いています。

  

症状や問題、行動で表れるSOS

ボクは教育者(きょういくしゃ)ではなく、子どもの『言葉(ことば)にならない心の叫(さけ)び』を聴(き)く「心の専門家(せんもんか)」です。

 

5つ前の記事(きじ)の、「ボクが、子どもの育(そだ)ちや学習(がくしゅう)は『必ずしも学校でなくていい』と発信(はっしん)する理由(りゆう) 」の中で、

 

その子の生(う)まれ持(も)った気質(きしつ:にんげんがそれぞれにもつ、心やからだのせいしつ)や個性(こせい:それぞれがもつ自分らしさ)が、花開(はなひら)くことなく押(お)し潰(つぶ)されたとき、さまざまな症状(しょうじょう)や問題(もんだい)とされる行動(こうどう)、つまり『言葉にならない心の叫び』を出す

ということをお伝(つた)えしました。

 

これはつまり、「しつけ」や「教育(きょういく)」などの中にその子らしい気質や個性が押し潰されるような何かがあると、子どもの心やからだ、行動(こうどう)にSOSを示(しめ)す何かが表(あらわ)れるということです。

 

そのひとつが不登校(ふとうこう)であり、おなかの痛(いた)み、万引(まんび)きや非行(ひこう)過食症(かしょくしょう)もみんなSOSのサインなのです。

 

「『心が死ぬ』? 「学校がつらい、イヤ」な子どもの心はどうやって守るか」というタイトルの記事(きじ)から、ある子が言った『心が死ぬ』という言葉についての発信(はっしん)を続けていますが、

 

その子が言った、『心が死ぬ』という心の状態(じょうたい)というのが、SOSを発(はっ)している子どもたちの心の状態を表しているのではないかと思います。

 

そこでボクは『心が死ぬ』という感覚(かんかく)や『SOSが表れている症状や問題とされる行動』の原因(げんいん)として、『心理的虐待(しんりてきぎゃくたい)』を取り上げる必要(ひつよう)があると考えました。

 

心理的虐待』は極(きわ)めて目に見えにくく、する方(ほう)も、「良いこととして無自覚(むじかく)に」行われるので、中々(なかなか)気づかれないまま隠(かく)れていることが多いのです。

 

ですから後半(こうはん)は、

心理的虐待』の中身(なかみ)とその問題、子どもの成育(せいいく)への影響(えいきょう)

についてお話しようと思います。

 

わかりにくい心理的虐待

まず、子どもの『心が死ぬ』『SOSを発している』という状態は、

心理的(しんりてき)な虐待(ぎゃくたい)によってもたらされるトラウマ(心的外傷⦅しんてきがいしょう⦆:心の傷⦅きず⦆

と同じような状態のことではないかと感じています。

 

例えば、

  • 『 “子どものため”とされる、大人側(おとながわ)の価値観(かちかん:何にどういう価値⦅かち⦆を認⦅みと⦆めるかという判断⦅はんだん⦆)の一方的(いっぽうてき)な押しつけ、または強制(きょうせい:無理⦅むり⦆にさせること)が存在(そんざい)する
  • 社会(しゃかい)や大人の常識(じょうしき)の枠(わく)に当てはめさせるための、無意識的(むいしきてき)な誘導操作(ゆうどうそうさ:誘⦅さそ⦆い導⦅みちび⦆き操⦅あやつ⦆って動⦅うご⦆かす)が存在する

 

これらが日常的(にちじょうてき)に繰(く)り返(かえ)される場合(ばあい)その悪影響(あくえいきょう)から

 

心理的虐待(しんりてきぎゃくたい):子どもの心の成長⦅せいちょう⦆や人格形成⦅じんかくけいせい:性格をかたちづくること⦆に悪影響をおよぼす大人の言葉や態度・行為⦅こうい⦆のこと)

 

に相当(そうとう)すると認識(にんしき)します。

 

強調(きょうちょう)しておきたいことは、そこに脅(おど)しや圧力(あつりょく)を伴った大人の有害(ゆうがい)な言葉や態度、そして暴力的行為(ぼうりょくてきこうい)が存在しなくても、これらの押しつけ」「コントロールによって次のような悪影響を受けてしまうということです。

 

心理的虐待の影響

これらの「押しつけ」「コントロール」によって、その子が持つ本来(ほんらい)欲求(よっきゅう)や自然に湧(わ)いた感情(かんじょう)を抑圧(よくあつ:心の奥底⦅おくそこ⦆へおしこむこと)させるだけでなく、

 

持って生まれたその子の気質(きしつ)や個性(こせい)が押し潰され、そして『主体性(しゅたいせい:じぶんの意志《いし》・判断《はんだん》によって、行動《こうどう》しようとする態度《たいど》や力)

 

までもが奪(うば)われてしまうのです。

 

また、『隠れた心理的虐待は』 “子どものため” を名目(めいもく:表向⦅おもてむ⦆きの理由⦅りゆう⦆)として、「しつけ」や「教育」あるいは「指導(しどう)」という名のもとに行われるだけに、子どもにとっては【抵抗不能(ていこうふのう)】です。

ですからそれらによって【子どもの心(頭⦅あたま⦆)への侵入(しんにゅう)が許(ゆる)され、子どもの心(頭)が、大人の考えに支配(しはい)されていく(大人化⦅おとなか⦆されていく)】という問題(もんだい)もあるのです。

 

さいごに

社会(しゃかい)や教育(きょういく)のシステム上、

「ひとなみにしておかないといけない」

「ほかの子より遅(おく)れをとってはいけない」

「社会(しゃかい)からおちこぼれてはいけない」

という考えに支配(しはい)されている親御(おやご)さんが想像以上(そうぞういじょう)に多いことを、カウンセリングを通(とお)して実感(じっかん)させられています。

 

もし、不登校にいたる歴史(れきし)や背景(はいけい)に、そのような親御さんの考えや焦(あせ)りによって、前述(ぜんじゅつ)したような「押しつけ」「コントロール」の影響(えいきょう)が存在(そんざい)するかもしれないということを意識(いしき)することができれば、子どもさんへの対応(たいおう)や選択肢(せんたくし)に、柔軟性(じゅうなんせい)や繊細(せんさい)な配慮(はいりょ)がもたらされるのではないでしょうか。